宝泉窯

宝泉窯

奈良県宇陀市にある重要伝統的建造物群保存地区に選定された古い街並みが残る町、宇陀松山。

その街並みの中にある、綺麗なからし色に染められた麻の暖簾をくぐると、趣のある土間や玄関、奥の和室と至る所に、町屋の雰囲気と調和した器や小物たちが並べられています。
一つ一つ丁寧に作られました!と胸を張っているようにすら見える作品達。
その作品を作られているのが、この「宝泉窯」のご主人、杉本遊炫さんです。
今回は杉本さんと奥様にお会いして、伝統芸能や古き良き街並みに対するその熱い想いをお話ししていただきました。

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1986年、京都から独立をきっかけに移住した。移住先に選んだのは室生の田口という所だった。
室生に住んでいる同級生のお店、甘味処「やまが」に遊びに行ったときに触れた室生の環境を気に入り、その後も何度も足を運び移住を決めた。

移住した室生で工房を開き、陶芸に没頭した。

その後大宇陀にきたのは2011年。空き家の新聞広告をたまたま見て訪れ、その他にも何軒か見ていたそうだが、やはり大宇陀のこの町屋が一番のお気に入りだった。
そんな出会いから始まり、この大宇陀の町屋にきて今年で6年目になる。

陶芸をやり続けながら、青森から天草まで日本各地のさまざまなイベントや展示会に出展。
様々なイベントに出展したり、お客として訪れたりして思うことがあった。

今流行りのマルシェはたくさんある。出展者の垣根は低く、だれでも訪れることができ出展することもでき、楽しめる。
ただ、本当に芸を突き詰めてきて、伝統を残していきたい、つないでいきたいと思う杉本さんには物足りない部分もあった。
もしかしたらお客さんは少し減るかもしれない。来る方も出展する方もハードルは上がるかもしれない。
それでもやってみたいという夢ができた。
夢は【クラフトフェア】を開催すること。
陶芸家同士が、ライバルながら惚れ込んでしまうような志をもった職人、その手から生まれた作品。それらが並び、皆で手に取りながらいつまでも「ものづくり」について語れるような一日。そんなイベントをやりたい。

「30~50ブースあったらいいかな。」と、いつか開催されるだろう【クラフトフェア】について話す杉本さんの眼はキラキラしていて、こっちまで一緒にお手伝いしたくなるほどだ。

「ものづくりの原点を後の人たちにも伝えていきたいんだ。」そう語る杉本さん。杉本さんのような方が後に伝えていくことをやめてしまったら、もう杉本さんより後の世代の方はこの作品に、芸術に触れることも知ることもできない。そう考えると今まで伝えてきてくれた先人の方々には感謝しかない。遠い昔から、繋いで、紡いできてくれた方がいるからこそ、今がある。

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茶碗は季節によって変えるものだということはご存知ですか?
飲み口が狭くて茶が冷めにくい筒茶碗は、冬向き。
広くて冷めやすい平茶碗は夏向き。
湯呑茶碗にも、お客様用、家庭用など種類があるそうです。そんな知識の元、今日はどんな茶碗がいいだろう?と選んで出してくださったと思うと、喜びもひとしおです。

おいしいお茶を頂いていると、私たちと杉本さんと奥様は違うお茶碗であることに気づきました。

「こちらのは家庭用なんですよ。」と話す奥様の手には、綺麗な花が絵付けされた茶碗があります。

元々は陶芸のみだったが、室生で陶芸に没頭しながらちょっと空いた時間に草花を描いたことがきっかけで、その後も絵を描き続けた。杉本さんは実は絵描きになりたかったそうです。
杉本さんのお家は親子3代続く絵描きの家系。自分には向いてないと思って絵描きの道はやめたが、絵を描くことは好きだった。

宝泉窯には絵付けした陶器がたくさんあります。
しかし前述したように杉本さんは元々絵を描いていたわけではありません。陶芸をずっとやっていく中で、空いてる時間に絵を描き始めたのです。
杉本さんは言います。「技術の上のアートだからね。」
ものづくりの技術があってこそ、それを引き立たせるアートになるのだと。

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写真の陶器のボタンは奥様が作られています。紐をとおしてペンダントとしても使える女性に人気の作品です。

築100年以上の町家に住んでいる杉本さんはこの町家、この街並みに惹かれて宇陀に来られました。
生活しているうちに、この宇陀の街並みも後世に残していきたいし、皆に訪れてほしいとも思うようになりました。
杉本さんの夢は【クラフトフェア】をこの宇陀松山で開催し、古き良き街並みの良さを皆に感じてほしい。

宝泉窯をはじめ、情緒ある雰囲気はそのまま残されている町屋たち。その町屋たちは今も誰かが生活していて「家」として生きている。

「中まで入って見てほしいんだよね。見られるの嫌だっていう人もいるかもしれないけどさ。」と笑って言う杉本さん。

外から見て十分趣を感じる素敵な町屋だが、一歩中に入ると、外から見ただけでは感じられない、圧倒的な『昔からあり続けることで生まれる空気』を感じた。

それは懐かしさだったり、この家を建てた先人達の偉大さだったり、住み続けた人々の歴史だったり・・・とても一言では表せないものがここにはある。

こうして今もここにあること、そして飾られているだけではなく家として機能していること。それはもう素晴らしい、に尽きる。

「中まで入って、見てわかることや感じることがある。この町屋や宇陀松山の街並みの良さを感じて後世に繋いでいってほしい。」

杉本さんは今日も宝泉窯で、芸術の良さ、伝統の大切さ、古き良き街並みを守っていくことの大切さを、作品を通じて発信し続けています。

 

取材・記事 宇陀ビジターセンター(大宇陀温泉あきののゆ)大谷

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【宝泉窯~やきもの工房~】

所在地 〒633-2161 奈良県宇陀市大宇陀上新1909

TEL・FAX 0745-83-0883